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卒後研修制度が地域医療に与えた打撃ははかりしれません.医師の偏在(都市部への集中)は地域医療の崩壊をおこしつつあります.自分自身のQOLを優先したい気持ちは誰にでもあると思いますが,医師という職業は「先ず,患者さんのことを考えて行動する」という崇高な使命感があってこそ成り立つものだと信じています.君たちの中の少なくとも何割かは,医師を目指して医学部を受験した時に高い志を立てたはずです.その気持ちを忘れないでください. 例は悪いのですが,6年間の医学部教育には学生1人あたり約1億円が掛かるそうです.そこには多額の税金が国公立,私立大学を問わず投入されているのです.自分ひとりの力で医師免許を得たなどと考えないでください.一般市民の人々は将来に向けて私たち,君たちに投資してくれているのです.日々の医療活動はそれに対する恩返しではないでしょうか.
群馬大学医学部附属病院の皮膚科専用ベッド数33床ですが,常時この数を超える患者さんが入院されており,日本の皮膚科ではトップクラスの年間入院患者数です.入院される患者さんの疾患は,皮膚腫瘍(悪性黒色腫,有棘細胞癌,基底細胞癌,日光角化症,悪性リンパ腫など),膠原病(強皮症,エリテマトーデス,皮膚筋炎,シェーグレン症候群,血管炎など),いわゆる皮膚科固有の疾患(自己免疫水疱症,アトピー性皮膚炎,乾癬,下腿潰瘍,重症薬疹,褥瘡など),さらに重症熱傷を含めて非常に多岐に亘っています.従って,他施設では経験できないほど多くの患者さんの担当医となることができます.湿疹・水虫だけしか診られない皮膚科医ではなく,重症膠原病患者の内科的管理,皮膚外科手技(皮膚の形成外科を含む),多剤併用化学療法の実施など,多方面に及ぶ知識と技術を習得した有用な皮膚科医の育成・輩出を目指しています.
私たちの教室の特徴は,全員が出席して毎週行う臨床・病理カンファレンスと外来(患者さんの)教授回診です.臨床・病理カンファレンスでは,研修医および若手医師が外来受診患者さんの臨床写真とその患者さんの病理組織標本を提示して説明することにより,診断能力の向上を促しています.皮膚病理を読むトレーニングを行っていない他施設皮膚科が少なくありませんが,私たち指導医は長年にわたり蓄積してきた経験と知識を後進の医師に伝えることが責務と考えて指導に当たっています.また,外来(患者の)教授回診では,臨床写真ではなく実際の患者さんの発疹を診て,複数の指導医が意見を述べて暫定的な診断と治療方針を決定していく過程を見てもらっています.先輩医師の思考過程を知ることは臨床能力向上にとても役立つはずです.実際,この教育システムを自大学に導入するために見学に来る他大学の教員もおります.
「夜間や休日に呼び出しのない皮膚科は楽だろう」と期待している研修医にとっては期待はずれになるかもしれません.「臨床能力の高い医師として社会に貢献する人生を歩みたい.」と望む研修医は私たちの仲間になってください.「鉄は熱いうちに打て」,「三つ子の魂,百までも」という古い言葉があります.若い時に苦労しながらも臨床医として学ぶことの基本姿勢を身につけておけば,その上に君たちが理想とする臨床医の像を打ち立てることが可能です.
女性医師にとっても皮膚科は仕事と出産・育児を両立させやすい科であることは間違いありません.better halfと両親の理解と援助は不可欠ですが,要は本人のやる気です.現在,育児期間中でありながら関連病院で勤務している先輩女性医師が4人おります.また,子育てをしながら病棟医長として獅子奮迅の活躍をしている女性講師もおります.困った時はお互い様と男女を問わず助け合っていく体制が医会長を中心に出来上がっているからこそ多くの女性皮膚科医が臨床の第一線で活躍できているのだと思います.
あらゆる医療機器が直接診ることのできない内臓病変を可視化するために開発されてきました.皮膚病変は患者さん自身は言うに及ばず,医師が直接診て触れることができます.眼前に提示される皮膚病変から様々な情報を読み取り,診断・治療する醍醐味は皮膚科医独自のものです.また,治療効果もまさに一目瞭然です.さまざまな経験をしながら,皮膚科医の仕事を知ることが第一段階,皮膚科医の仕事を好きになることが第二段階です.そして,皮膚科医の仕事を楽しめるようになれば最高の段階に到達したといってよいでしょう.一緒にこの階段を登っていきませんか.
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