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研究

茂木グループ

研究室紹介

研究メンバーLABORATORY MEMBERS

茂木 精一郎(グループ責任者)
内山 明彦
関口 明子
山崎 咲保里
中村 英玄 (群馬大学形成外科)
Hritu Baral
Syahla Nisaa Amalia
井上 裕太
Bolor NasanBat
横山 洋子
荻野 幸子
細井 真里
鳥居 良子
上原 顕仁
藤原 千紗子

研究テーマ

皮膚硬化性疾患(全身性強皮症、限局性強皮症、硬化性萎縮性苔癬など)の病態解明と治療法への応用

全身性強皮症、限局性強皮症、硬化性萎縮性苔癬などの皮膚硬化性疾患の病態解明を目指した基礎研究・臨床研究を行っています。特に全身性強皮症では、皮膚硬化だけでなく、末梢循環障害、難治性皮膚潰瘍に対する基礎・臨床研究や新たな治療法の開発も進めています。また、他科と連携して様々な合併症に対する臨床研究も行っています。厚生労働省強皮症調査研究班にも所属しており、ガイドラインの策定や患者支援も従事しています。
強皮症の基礎研究では、培養線維芽細胞や全身性強皮症モデルマウスを用いて、皮膚線維化、末梢血管障害の発症するメカニズムの解明や治療への応用を目指しています。
我々は、寒冷刺激が強皮症の皮膚線維化や血管障害に関与することや、その機序について新たな知見を得ました (Scientific Reports 2016)。 また、分泌蛋白質アペリンが皮膚線維化を制御するメカニズムの一部を明らかにしました(Arthritis & Rheumatology 2018)。 分泌蛋白質MFG-E8がインテグリンとの結合を介して線維化の制御に関することも示しました(Arthritis & Rheumatology 2019)。
血管障害によって低酸素が生じると細胞外ATPが放出されて、皮膚の線維芽細胞上に発現するP2Y2受容体を介してIL-6が産生されることと線維化が亢進することを明らかにしました(Journal of Investigative Dermatology 2019)。また、酸化ストレスの抑制が皮膚線維化の抑制につながることも明らかにしました(Journal of Dermatological Science 2019)。
その他にもいくつかのテーマで強皮症のメカニズムの解明を目指して研究を行っています。

臨床研究では、群馬大学臨床試験部との共同研究によって、全身性強皮症の血管障害(レイノー現象)に対する新たな治療法(ボツリヌス毒素)の実用化を目指した研究を行っています。
強皮症のレイノー現象・手指潰瘍に対するA型ボツリヌス毒素局所注入療法の有効性、安全性を示した論文(open study)
Journal of Dermatology. 2016; 43: 56-62.
(Journal of Dermatology (JD) Award (Most cited paper 2017 impact factor period) 受賞論文 )
https://www.med.gunma-u.ac.jp/newsrelease/3177.html

強皮症のレイノー現象・手指潰瘍に対するB型ボツリヌス毒素局所注入療法の有効性、安全性を示した論文
Acta Dermato-Venereologica 2017; 97(7):843-850.
http://www.med.gunma-u.ac.jp/newsrelease/4482.html

http://research.opric.gunma-u.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2017/12/SUIGEN.vol2.pdf

2016年12月より当院にて医師主導治験としてランダム化二重盲検試験を開始し、終了しました。
ボツリヌス毒素注射による有効性と安全性が示唆されました。
http://ciru.dept.showa.gunma-u.ac.jp/information/pdf/bosyu201612.pdf

「レイノー現象に対するボツリヌス毒素治療」は国内および米国の特許を取得しました(特許第6450999号、US10478478)

また、消化器・肝臓内科、呼吸器内科、循環器内科、腎臓・リウマチ内科、整形外科、核医学科、臨床検査医学、泌尿器科、公衆衛生学など様々な専門科にご協力いただき合併症の病態解明と新たな治療法の開発を目指しています。
医工連携によって、群馬大学理工学部の山越芳樹先生と株式会社アドテックスと連携し末梢循環障害の新たな評価装置の開発を行っています(国内特許取得:特許第6692347号 、国際特許PCT出願中)。

参考文献:
■Sekiguchi A, Motegi S et al. Inhibitory effect of kaempferol on skin fibrosis in systemic sclerosis by the suppression of oxidative stress. J Dermatol Sci 2019; 96: 8-17.
■Perera B, Sekiguchi A, Moetgi S et al. The regulation of skin fibrosis in systemic sclerosis by extracellular ATP via P2Y2 receptor. Journal of Investigative Dermatolgy 2019; 139(4):890-899.
■Fujiwara C, Motegi S et al. Suppressive Regulation by MFG-E8 of Latent Transforming Growth Factorβ-induced Fibrosis via Binding to αv Integrin: Significance in the Pathogenesis of Fibrosis in Systeimic Sclerosis. Arthritis & Rheumatology 2019; 71: 302-14.
■Yokoyama Y, Motegi S et al. Inhibitory regulation of skin fibrosis in systemic sclerosis by apelin/APJ signaling. Arthritis & Rheumatology 2018; 70: 1661-72.
■Motegi S, et al. Efficacy of Botulinum Toxin B Injection for Raynaud’s Phenomenon and Digital Ulcers in Patients with Systemic Sclerosis. Acta Dermato-Venereologica 2017; 97(7):843-850.
■Motegi S, et al. Beneficial effect of botulinum toxin A on Raynaud’s phenomenon in Japanese patients with systemic sclerosis: a prospective, case series study. Journal of Dermatology. 2016; 43: 56-62.
■Uehara A, et al. Mechanistic insight into the norepinephrine-induced fibrosis in systemic sclerosis. Scientific Reports 2016; 6: 34012.
■茂木精一郎全身性強皮症の診断から治療まで Derma 2016; 250: 1-15.
■茂木精一郎 全身性強皮症とその鑑別疾患 総説 全身性強皮症の血管病変. J Visual Dermatology 2016; 15: 32-36.
■Motegi S. Endothelin. Systemic Sclerosis: Basic and Translational Research. 2016:155-171.
■Motegi S, et al. Experimental Dermatology, 2014; 23: 664-9.
■Yamakoshi Y, Motegi S, Ishikawa O. Evaluation of peripheral blood circulation disorder in scleroderma patients using an optical sensor with a pressurization mechanism. PloS one 11(8) e0159611.

難治性皮膚潰瘍(褥瘡、糖尿病性潰瘍)の病態と新たな治療法の開発

我々はこれまでに難治性皮膚潰瘍の治療(創傷治癒)について基礎、臨床研究を行っています。
糖尿病患者の皮膚潰瘍が難治である原因・病態を解明し、新たな治療法を目指した基礎、臨床研究を進めています (Journal of Dermatological Science 2017)。
褥瘡(床ずれ)は発症初期は紅斑や紫斑のみですが、その後、2週間程度経過すると皮膚潰瘍に至ります。現在のところ、皮膚潰瘍の形成を防ぐ治療薬はありません。そこで、皮膚潰瘍が生じることを防ぐ新たな治療法に着目し、新規治療法の開発を目指して研究を行っています。
我々は、、マウスを用いて褥瘡(床ずれ)の発症初期(急性期褥瘡)における病態を解明し、様々な薬剤や分子が褥瘡(皮膚潰瘍)の発生を防ぐ新たな治療薬となる可能性を見出しました。特に間葉系幹細胞に着目し、その制御機構や治療への応用を目指しています。

また、亜鉛欠乏状態では、床ずれ(褥瘡:じょくそう)が大きくなりやすく、治りづらくなることと、そのメカニズムを明らかにしました。亜鉛の経口補充によって褥瘡の改善がみられることも見出しました。
治りづらい褥瘡をみたら、積極的に血清亜鉛値を測定して、低亜鉛状態の場合は、亜鉛の経口補充を行うことで褥瘡の改善・治療につながる可能性が考えられました。また、高齢者ではほとんどが潜在性亜鉛欠乏状態であることが指摘されているため、積極的に血清亜鉛値を測定して、低亜鉛状態であれば亜鉛の経口補充をすることで、褥瘡の発生の予防にもつながると考えられました。 (第49回日本創傷治癒学会 研究奨励賞 受賞)

こちらに詳しい説明がありますのでご参照ください
http://www.gunma-u.ac.jp/information/56402

参考文献:
■Inoue Y et al. Wound Repair and Regeneration 2020 in press
■Yamazaki S et al. Scientific Reports 2020; 10(1):1349
■Nakamura H, et al. Journal of Dermatological Science 2019; 95: 62-69.
■Sekiguchi A, et al. Journal of Dermatological Science, 2018; 90: 144-53.
■Motegi S, Ishikawa O. Mesenchymal stem cells: The roles and functions in cutaneous wound healing and tumor growth. Journal of Dermatological Science 2017; 86: 83-9.
■Motegi S, et al. Scientific Reports 2017; 7(1):17186(日本褥瘡学会 大浦賞 受賞論文)
■Uchiyama A, et al. Journal of Dermatological Science, 2017; 86:187-197 .
■Uchiyama A, et al. Experimental Dermatology, 2016; 25: 678-83.
■Uchiyama A, et al. Journal of Investigative Dermatology, 2015; 135: 1157-65.
■Uchiyama A, et al. Scientific Reports, 2015, 13; 5: 9072.
■Uchiyama A, et al. American Journal of Pathology, 2014, 184: 1981-90.
https://www.med.gunma-u.ac.jp/newsrelease/2361.html

皮膚悪性腫瘍の病態解明と新しい治療法の開発

我々はこれまでに、悪性黒色腫などの皮膚悪性腫瘍の転移や血管新生の制御について研究を継続しています。特に2つの分子(SHPS-1とMFG-E8)に着目し、その制御機構を明らかにしつつあります。これらの分子の遺伝子欠損マウスや抗体、変異蛋白質などを用いてさらなる病態解明に挑み、治療への応用を目指します。最近、間葉系幹細胞と悪性黒色腫との関連性についての新たな知見を得ました(Cancer Research 2016)。
https://www.med.gunma-u.ac.jp/newsrelease/3901.html
また、血管肉腫の新たな病態と治療法を報告しました(Journal of Dermatological Science 2019)。

参考文献:
■Fujiwara C, Motegi S et al. Journal of Dermatological Science 2019; 96: 18-25.
■Motegi S et al. Journal of Dermatological Science 2019; 93(2):139-141. .
■Yamada K, Uchiyama A et al. Cancer Research 2016; 76(14):4283-92.
■Motegi S. et al. Arteriosclerosis Thrombosis and Vascular Biology, 2011; 31: 2653-2664.
■Motegi S. et al. Arteriosclerosis Thrombosis and Vascular Biology, 2011; 31: 2024-2034.
■Motegi S. et al. The EMBO Journal 2003; 22: 2634-2644.

遺伝性皮膚疾患の遺伝子検索と病態解明

遺伝性皮膚疾患の遺伝子検索による診断と、原因遺伝子によって生じる病態の解明を目指しています。「早老症」の厚生労働省研究班に所属し、病態解明と新規治療法開発に取り組んでいます。
https://www.nanbyou.or.jp/wp-content/uploads/upload_files/H30_kenkyumeibo_201804_69.pdf
http://www.m.chiba-u.jp/class/clin-cellbiol/werner/

参考文献:
■Motegi S, et al. Experimental Dermatology 2016; 25 Suppl 3: 20-27.
■Motegi S. et al. Acta Dermato-Venereologica 2015; 95: 978-84.
■Motegi S. et al. Journal of Dermatology, 2014; 41: 1047-52.
■Yokoyama Y, et al. Biochemical and Biophysical Research Communications 2012; 425: 353-6.

グループのメンバーの受賞

内山 明彦

■第30回(2019年度)コスメトロジー研究振興財団研究助成
■2019年度日本皮膚科学会基礎医学研究費(資生堂寄付)
■第17回ガルデルマ賞
■第18回(平成26年)北関東医学会奨励賞
■2014 SID/JSID Young Fellow Collegiality Awards
■第60回北関東医学会総会 優秀発表賞

上原 顕仁

■平成29年度加齢皮膚医学研究基金(ロート賞)
■平成29年度日本皮膚科学会基礎医学研究費(資生堂寄付)
■第21回(平成29年)北関東医学会奨励賞

Buddhini Perera

■第17回リディアオリリー記念ピアス皮膚科学振興財団「小川直秀奨学金」

関口 明子

■第83回日本皮膚科学会東京・東部支部合同学術大会  合同学会賞
■第118回日本皮膚科学会総会 優秀演題賞
■平成31年度加齢皮膚医学研究基金(ロート賞)
■2018 TSID/JSID Young Fellow Collegiality Awards
■第117回日本皮膚科学会総会 優秀演題賞
■第81回日本皮膚科学会東部支部学会賞
■第41回日本小児皮膚科学会学術大会  優秀口演賞
■第63回北関東医学会総会 優秀発表賞

藤原 千紗子

■第82回日本皮膚科学会東部支部学会賞
■2017 SID/JSID Young Fellow Collegiality Awards
■2017年きさらぎ応募賞

岸 史子

■第116回日本皮膚科学会総会  優秀一般演題賞

Syahla Nisaa Amalia

■第66回北関東医学会総会 優秀発表賞

中村 英玄

■第66回北関東医学会総会 優秀発表賞

グループの特徴

日常診療で出会った症例の一つ一つを大事にして、臨床の中で感じた疑問点や問題を解明したいという思いをもって研究を行っています。
全身性強皮症や悪性黒色腫などの難治性皮膚疾患の病態解明、新規治療法の開発を目指しています。また、褥瘡や糖尿病性潰瘍などの難治性皮膚潰瘍の病態、治療法の開発や、遺伝性皮膚疾患の遺伝子検索、病態解明にも取り組んでいます。最先端の研究を行っている国内外の研究室とも連携し研究しています。
2017年度には、研究グループのメンバーならびに共同研究者の皆様のお力添えによって、日本研究皮膚科学会賞(JSID賞)を頂くことができました。http://www.med.gunma-u.ac.jp/newsrelease/news/5213.html
今年度も、気持ちを新たにして、一丸となって目標に向かって励んでいきたいと思います。

我々の研究グループでは生化学、分子生物学の基礎や手法を習得することができ、マウスを用いた生体内実験、さらに臨床応用を目指して、ヒトの検体を用いた研究も行っています。研究で得られた成果を臨床に応用することを目指しており、臨床研究も並行して行っています。これまでに5名が博士課程を修了しています。学部生の方や修士課程および博士課程の大学院生として一緒に研究したい方、私どもの研究内容に興味を持たれた方はぜひご連絡ください。

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共同研究者

的崎 尚(神戸大学生化学・分子生物学講座シグナル統合学分野)
大西 浩史(群馬大学大学院保健学研究科 生体情報検査科学講座)
Mark C Udey (米国国立衛生研究所 (NIH) 皮膚科学)
山越 芳樹(群馬大学理工学部・電子情報理工学科)
奥西 勝秀 (生体調節研究所・遺伝生化学分野)
岩脇 隆夫(金沢医科大学総合医科学研究所細胞医学研究分野)

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